車いす乗車拒否に処分も 国、
車いすのまま乗車できるスロープ付きのユニバーサルデザイン(UD)タクシーで、車いす利用者への不当な乗車拒否が後を絶たないとして、国土交通省が業界団体を通じて全国のタクシー事業者に「道路運送法に違反しており、確認された場合は厳正に対処する」との通達を出したことが26日、分かった。19日付。悪質な業者には車両の一時使用停止を含めた行政処分も検討している。
国交省は多くの車いす利用者の訪問が予想される東京五輪・パラリンピックを見据え、車両購入に補助金を出してUDタクシーの普及を進めている。昨年11月にも乗車拒否をしないよう通達を出すなど対策を取ったが、大会開幕まで1年を切ってもなお、現場で徹底されていない。担当者は「大会時に恥ずかしくないよう、拒否が起きないようにしたい」と話した。
通達は不当な乗車拒否となるケースを列挙。(1)客が電動車いす利用者である(2)スロープの設置方法が分からない(3)乗り降りに時間がかかる(4)研修を受けていない(5)実際はUDタクシーとして運用していない――ことを理由に拒否するのは不当とした。
国交省によると、こうした行為は行政処分や指導の対象になる可能性がある。乗り場で順番待ちする車いす利用者に意思確認せず通過することも法に違反するとした。
また、UDタクシーに認定された車種にスロープを載せないまま運用した場合は事業改善命令の対象になると明記。車いすのスペースは座席ではないため、シートベルトで固定できないことは装着を義務付けた道交法に違反せず、拒否の理由にはならないとも指摘している。
障害者団体「DPI日本会議」が10月30日に21都道府県で実施した調査では、乗車を試みた参加者延べ120人の27%に当たる32人が拒否されており、団体は国交省に改善を要望していた。
団体の佐藤聡事務局長は通達について「実際の事例を具体的に示しているのが良い。業者は研修を徹底して意識を変え、拒否をなくしてほしい」と話した。〔2019/11/26 共同〕